薬剤師数の増加で需要を上回る。薬剤師の半数以上が勤務する薬局も国の方針に順応できなければ、淘汰されていく。薬局数は半数近くになるとの話も出ています。
薬剤師の売り手市場もついに終わりを告げようとしている。薬剤師は安泰と思われがちですが、既にそんな時代は過ぎました。
勤務薬剤師やこれから薬剤師になろうと思っている人も薬剤師の現状とこれからの薬剤師のあり方について、各々考えていかなくてはならないと思います。
私的な考えも含みますが、薬剤師の現状と今後のあり方について
診療報酬改定・経済財政運営と改革の基本方針から推測してみたいと思います。
・薬剤師の現状!薬剤師数と業種の内訳
(厚生労働省より引用 平成30 年12 月31 日における全国の届出)
- 「薬剤師数」は311,289 人(「男」120,545 人(38.7%)、「女」190,744 人(同61.3%))
- 翌年、2019年合格者数:10,194人
- 翌々年、2020年合格者数:9,958人
となっており、毎年大幅に増加。現在は推定約33万人
1.主に従事している施設・業務の種別
- 「薬局の従事者」は 180,415 人(総数の 58.0%)
- 「医療施設の従事者」は 59,956 人(同 19.3%)そのうち、「病院の従事者」は54,150 人(同17.4%)、「診療所の従事者」は 5,806 人(同 1.9%)となっている。
- ・「大学の従事者」は 5,263 人
- ・「医薬品関係企業の従事者」は41,303 人
- ・「衛生行政機関又は保健衛生施設の従事者」は6,661 人
2.薬局・医療施設に従事する薬剤師数の年次推移
薬局・医療施設に従事する人口 10 万対薬剤師数は 190.1 人で、平成29年(181.3 人)に比べ 8.8 人増加している。
「薬局」は大幅に増加しており、「医療施設」は増加傾向が続いている。
引用)厚生労働省ホームページ
・薬剤師数の増加と薬局数の減少で需要を上回り、売り手市場が終了?
平成 30 年度末現在の薬局数は 59,613 施設で、前年度に比べ 475 施設(0.8%)増加している。 また、人口 10 万人あたりの薬局数は 47.1 施設であった。増加傾向にあったが、今年のコロナ渦で経営難になり閉局する薬局もあったようなので、次回の統計ではどうなっているか不明である。
そして、後述記載するが、国の方針(診療報酬改定)で薬局数が半分程度に淘汰されてしまうという話もある。
薬剤師数は毎年、確実に大幅に増えており、売り手市場が終わる日もそう遠くない。
・経済財政運営と改革の基本方針を超簡単に(薬剤師・薬局関連)
- デジタル化の促進(マイナンバーカードでの保険証等の一括管理、処方電子化、AI等)
- 社会保障を抑制していこう
- かかりつけ薬局・健康サポート薬局、高度薬学管理機能を推進
1. デジタル化の促進
多くの事をデジタル化していく。デジタル化に向けての投資も促進して行くとのことで、AI等も進化・発展していく。
医療データを集積、公開していく事でエビデンスのある治療が出来るようになる。
AIの発達では薬剤師(人間)にしか出来ないことを伸ばしていく必要がある。
更に、コロナ渦でデジタル化が促進されていく。オンライン診療、オンライン服薬指導の取り組みも既に始まっている。
今後、デジタル化に伴いカルテの共有化も図っていくようだ。
薬局によってはあまりみる事がなかった検査値もみられるようになり、薬学の知識・疾患の知識等、必要なスキルも増えていく。薬剤師の本領が発揮できる場が増えていき喜ばしい事だ。
しかし、薬剤師の必要数は減り、能力の底上げが求められる。
2.社会保障を抑制していこう
国民のため診療報酬改定で薬価減少・調剤技術料の減少等で医療費削減。後述記載する診療報酬改定の内容も国の方針に沿って改訂が行われている。
3.かかりつけ薬局・健康サポート薬局、高度薬学管理機能を推進
かかりつけ薬局・健康サポート薬局を推進で薬の一元管理で重複投与、ポリファーマシーの抑制、生活習慣病の予防・セルフメディケーション推奨等を掲げている。薬局の機能が合えば、加算等も増えてくると考えられる。そのためのスキル・資格の取得が求められる。
しかし、国の方針である医薬分業で増え続けた、全体の薬局数の半数近くを占める門前薬局も薬局によっては、高度薬学管理の推進で上向きになるかもしれないが、デジタル化に伴い、どこの薬局でも診療録を閲覧可能となれば、門前でなくても医療施設との連携はどこでも取りやすくなる。
薬剤師としては、高度薬学管理の推進における、がん化学療法の指導、管理等が出来るようにしていく必要があり、やはり個人の能力の底上げが求められている。
・薬局が淘汰され、現在の半分程度に減少?薬剤師も不安でいっぱい
国の方針が推進され、診療報酬改定が進められるほど、経営が厳しくなってくる薬局も出てくるでしょう。今回の診療報酬改定でも処方箋の集中率が高い等の条件で、調剤基本料の引き下げ等もあった。門前薬局には厳しい状況だ。
これが現在6万店舗近くある薬局数が、診療報酬改定で後々は半数の3万店舗程度になってしまうという話しの一因とも考えられる。
薬剤師が溢れかえってきている中、総薬剤師数の半数以上が働いている薬局が淘汰されてしまうのは非常に薬剤師としては不安である。
・2020年診療報酬改定の変更点とポイントまとめ
やはり、上記の国の方針が実現されるように改訂が行われている。
社会保障の抑制で医療費削減、質の高い医療サービスを提供するために診療報酬制度の構築が必要となります。
2020年度診療報酬改定における薬剤師、保険薬局目線で改めてポイントを解説。
2020年度診療報酬改定では、2025年を見据えた「患者のための薬局ビジョン」の実現を目指しています。
- 「かかりつけ機能の評価」
- 「対物業務から対人業務への転換」。
- 「在宅業務の推進」
- 「後発医薬品の使用」
- 「ICTの活用」
1.「かかりつけ機能の評価」
薬物療法の有効性・安全性を確保するため、服薬情報の⼀元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が求められています。
健康や介護などに豊富な知識と経験をもち、生活習慣病の予防・セルフメディケーション等を推進していく
- 「かかりつけ薬剤師指導料」、重複投薬解消に対する取り組みを評価した「服用薬剤調整支援料2」が新設。
- 同一薬局の利用促進のため、薬剤服用歴管理指導料の点数が低くなる再来局期間が6ヶ月から3ヶ月へ短縮
- 複数の医療機関の処方箋をまとめて応需する場合、2枚目以降の調剤基本料の点数が減算。
2.「対物業務から対人業務への転換」
対人業務の拡充として、がん患者の高度薬学管理や喘息、糖尿病患者の服薬指導や状況の確認等を推進。
対物業務の見直しでは調剤料の見直し等が行われた。
- 「薬剤服用歴管理指導料」の引き上げ、喘息などの患者さまに対する実技指導を評価した「吸入薬指導加算」や、インスリンなどの糖尿病治療薬の適正使用を推進する「調剤後薬剤管理指導加算」を新設。
- 調剤基本料の改定
- 内服薬の調剤料において日数に比例した①1~7日分、②8~14日分の点数が定額化され、15日分以上の点数も引き下げられるなど、調剤技術料の見直し
3.「在宅業務の推進」
- 緊急に訪問薬剤管理指導を行った場合の評価(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料)の拡充、簡易懸濁法を開始する患者に必要な支援を行った場合の評価(経管投薬支援料)が新設
4.「後発医薬品の使用推進」
- 後発医薬品の調剤数量割合による点数の増減や、調剤数量割合が低い場合の減算規定の範囲が拡大。
5.「ICTの活用」
- 改正法の一部施行により、オンライン診療に連動したオンライン服薬指導の評価(薬剤服用歴管理指導料4、在宅患者訪問薬剤管理指導料など)が新設
今後の薬剤師・薬局はどうすれば生き残れるのか
薬局の生き残り方は国の方針に沿って、薬局の機能を備えていく事が必要。薬剤師もそこを考えて、資格取得等を考えていかなくてはならない。
1.「かかりつけ機能」の推進
新設された「かかりつけ薬剤師指導料」があります。「薬剤服用歴管理指導料」では、43点または57点の算定が認められていますが、かかりつけ薬剤師指導料では76点の算定が認められています。
そして、「地域支援体制加算」の要件のひとつでもあるため、積極的な取り組みが必要と考えられます。
2.改定のポイントでも記載されている「地域支援体制加算」、「後発医薬品調剤体制加算」の算定取得
調剤技術料を引き上げるためには、「地域支援体制加算」や「後発医薬品調剤体制加算」等があります。
地域支援体制加算は施設基準や要件が厳しい加算となっています。算定要件の中に薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が必要であるため、薬剤師個人で言えば、積極的に資格の取得がおすすめ。全ての要件を満たせば処方箋1枚あたり38点の算定が認められています。
後発医薬品調剤体制加算においても、数量割合に応じて同15~28点の算定が認められているため、後発医薬品の使用割合を高めることも重要です
3.「在宅医療」の推進
前回の改定に引き続き、調剤基本料は薬局の要件や実績に応じて、5種類(9~42点)の点数に細分化されています。最も点数の高い「調剤基本料1(42点)」を算定するためには、集中率(全処方箋枚数に占める特定の医療機関からの処方箋枚数の割合)が低くなくてはなりません。
算定には多施設からの処方箋応需が求められます
「在宅医療」に関する処方箋は、受付回数の計算から除外されるため、在宅医療の促進は調剤基本料を上げる事にも繋がります。
4.健康サポート薬局は今後期待
以前より推奨されている「健康サポート薬局」は、現在の診療報酬では評価が行われておらず、収益に直接つながることはありません。しかし、次回以降の改定により何らかの加算が付く可能性があると考えられる。
・どんな薬剤師が求められているのか、重宝される薬剤師
薬局が生き残るためには上記にあげたように加算の算定をしていかなくてはならない。算定の要件に必要な資格もあり、その資格を取得していれば重宝されると考えられる。
専門認定薬剤師は病院薬剤師の取得が多いイメージだが、薬剤師の半数以上を占める薬局薬剤師も資格を積極的に取得していく必要がある。
例えば、診療報酬改定の内容に沿えば、高度薬学管理加算では外来がん治療認定薬剤師、糖尿病患者の状況確認等の評価では糖尿病薬物療法認定薬剤師、地域支援体制加算では研修認定薬剤師・地域薬学ケア専門薬剤師等の様々な資格があります。
資格で悩んでいるなら、診療報酬改定の内容に沿って考えてみるのも一つの手です。
【現役病院薬剤師が新卒・薬学生に伝えたいこと~資格編(専門認定薬剤師など)~】
・まとめ
具体的には、在宅医療やかかりつけ業務などに積極的な薬局では、「地域支援体制加算」、「かかりつけ薬剤師指導料」等の評価を受けやすいことから増収増益傾向だと考えられます。門前薬局では、これらの評価を受けられないことに加えて、調剤基本料や調剤料(内服薬)の見直しにより、減収減益の影響を受けやすいと言えます。
これが薬局数が半数程度に淘汰されてしまうかもという話しが挙がる一因と考えられます。
日本は診療報酬という公定価格制度を取り入れているので、国の方針に沿った取り組みが求められます。
薬剤師数も毎年大幅に増加している中、薬局数の減少が予想され需要を上回ってしまう不安も多いですが、薬剤師としての能力を底上げすれば職能も広がる結果になるというポジティブに私は受け止めています。
診療報酬改定や経済財政運営と改革の基本方針の内容から、どのような医療が求められているのか等を読み取ることもできます。一人一人の薬剤師が自分なりに考えていく必要があると思います。
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